【エターナル夏休み部】第1章 2話「懺悔(?)の始まり」

メインストーリー1章2話

2話「懺悔(?)の始まり」

放課後・???

先生。おれ、参加してるよ? 課外活動。
生徒指導教員
生徒指導教員
……。
だっておれ、生徒会長だよ?
生徒の代表みたいな立場なのに、休むわけないじゃん。
たとえ熱が出ても大怪我しても、おれは参加する。
生徒会長だからね!
熱や大怪我は
「のっぴきならない事情」に十分当てはまると思うので、
休んでも罪にならないと思いますが。
……けど、生徒会長さんの今までの働きを見ていると、
簡単に休むようには思えませんね。
みんなに楽しい行事を提供することに命かけてるからね!
いつも楽しいイベント企画してくれますよね。
遅くまで生徒会室で作業してるのよく見ます。
あはは。ありがとう!
楽しんでくれてるならおれも嬉しい。
今回の活動も、
ちゃんと最初から最後までいたってことでいいんだよな?
もちろん。
なので先生。
おれ、参加してます。
って言うと、ここにいる人のこと
見捨てたみたいな感じになっちゃうけど……。
とりあえず「サボり」は違うよ。参加してたことは事実だし。
生徒指導教員
生徒指導教員
だがな、陽谷。
お前のそれは記録にないんだ。
え?
生徒指導教員
生徒指導教員
生徒会長としても、ひとりの生徒としても、
お前が課外活動に参加していたという記録と、証拠がない。
証拠って?
生徒指導教員
生徒指導教員
誰一人として陽谷が参加しているところを見ていない。
こちらとしては、本人だけの証言だけをもとに
「参加していた」とするわけにはいかないんだ。
それだとサボっていても通用してしまうからな。
ふむ……。
それはおかしいですね。
生徒指導教員
生徒指導教員
参加していた証拠がない限り、
……無断欠席という疑いが晴れない限り、
こちらは同じ罰を与えるしかない。
お前にも、こいつら課外活動を放棄した罪人共と一緒に、
罪滅ぼしをしてもらうつもりだ。
いや強引すぎんだろ。
ああ、おかしい。
ハルヤお前、なんか参加してたって証拠ねぇのか?
生徒会長ならなんか、活動前に挨拶したとかさ。
それならみんな見てるだろ。
うーん……、それがさ。
今年から「生徒会長の挨拶」が省略されることになった
みたいなんだよね。
だから最初からスケジュールになかったんだ。
地域の人も参加するし、4月とはいえ
まだ日が完全に長いわけでもないから、
少しでも時間を短縮するためって聞いてる。
作業が延びて、犯罪に巻きこまれたらいけないしね。
「聞いてる」ってなんだよ。
生徒会で決めた方針じゃないのか?
先生側の提案だよ。生徒会はそれに従っただけ。
あ、でも別に、挨拶がなくても進むんなら別にいいんだ。
挨拶にこだわりがあったわけじゃないし、
スムーズに活動が進むならそれでいい。
だからおれも普通に了承したんだ。
ふむ……。
では活動が始まる前には、生徒会長さんが
参加されてることは誰もわからなかったんですね。
でも、他の方と一緒に作業したんですよね?
今回の課外活動は生徒と地域住民の方々で
小さなグループを組んで花壇の花植え作業を行います。
事前に配られた紙には、各々のグループが集合する場所が
書かれていて、各自そこで落ち合って作業をする……、
という手はずだったと思いますが。
あのさ。
お前は、そこまで内容知っててサボったのかよ……。
サボるという判断を下すには理由がいるのですよ。
内容を把握し、クソだと思ったからサボった。それだけです。
お、おう……。
グループ……。うん、そうだよね。
おれもそのつもりだった……。
というと?
いつのまにか、全体的にスケジュールや段取りが変わってて、
おれはひとりで作業することになってたんだよね。
えっ……。
新手のいじめですか?
いやそれ確実におかしいだろ。
うーん……。
なんかの間違いだとは思うんだけどね。
割り振り決めたのは生徒会の後輩だから、
何かの間違いでそうなったのかも……?
でもそれを指摘してる暇がないくらいに
課外活動前はバタついててさ。
生徒だけじゃなく地域の方にも迷惑かけちゃうから、
結局一人で作業したよ。
ちょっと寂しかったけどね。
みんなと作業できると思ってたから。
じゃ、じゃあ誰も生徒会長さんが参加してたって……。
うん、わかんないかも……。
生徒指導教員
生徒指導教員
というわけだ。
出席が確認できない以上、こちらはどうしようもない。
でもそれアリなのかよ。
出欠がチェックできない仕組みになってたんだろ?
生徒指導教員
生徒指導教員
その仕組みを作ったのは生徒会だ。
……はい。
生徒会長の、おれの責任です。
生徒指導教員
生徒指導教員
以上だ。
部活の説明諸々はこの紙を見るように。
ええ! 待ってください!
僕の件は!? 休むって連絡したのにー!

 

放課後・懺悔部部室

――というわけで、ここがおれたちの……。
……。
「懺悔部」の部室。……みたい。
……。
……。
……。
……。
「懺悔部」の活動内容は、ええと……。
学校や地域に貢献すること。
活動が学校側に評価されれば
めでたく廃部となり、各々の校内活動に戻ることが出来る。
……以上。
そんだけ?
ちょっと待ってくれ。色々と突っ込みどころ満載だな?
「懺悔部」のことだけじゃなくて
全部が突っ込みどころ満載ですよ。
わけわかんねぇ……。
部室は夏は涼しく冬も涼しい――……。
部活の部室決めの時に「綺麗だけど寒いから嫌だ」って、
どの部ももらってくれなかった部屋があてがわれたっぽいね。
寒さに耐えて懺悔しなさいってことでしょうかね……。
ちなみに部室の割り当てはどこの管轄だよ。先生? 生徒会?
通常なら生徒会。
でも今回は異例だろうから、先生たちが決めたのかもしれない。
……。
僕、ちゃんと熱も出てたのに……。
連絡も、したのに……。
ハァ……。
このままだと心が荒んできそうです。
無駄な時間を減らそうとしてサボった結果、
無駄な活動時間を増やすことになっただなんて。
と、とりあえず……。どうする?
自己紹介でもする……?
おれたち、一応はじめまして、だよね?
そんな呑気な……。
でも……。
お互い協力しないと、廃部にならないんでしょ……?
自己紹介ねぇ。
オレ全然後輩知らねぇわ。
丈は部活入ってないから、あまり接点ないかもね。
あの。ちょっと待ってください。
ん?
なんで受け入れてるんですかね?
……ええと、この状況のこと?
それ以外何があるんすか。
確かに俺は課外活動サボりましたけど、だからって懺悔部? の
活動に参加するとは言ってないです。
何が反省だ。
クソくらえってんですよ。
う、うん……?
納得できないのにやるわけない。
じゃあそういうことで。みなさん頑張ってください。
え、あっ! 待って――
……。
行ってしまいましたね。
それでは、僕も帰ります。
えっ!? どうして?
用事があるんですよ。
突然の呼び出しだったので、予定が押してしまっています。
あ!!
オレ、バイトだった!
とりあえず、話し合いは後日にしませんか?
うん……。
また連絡するよ。
はい。
僕とリョウタは2-Cにおりますので。
では。
美知くん、待って!
あ……、じゃ、じゃあ今日は僕も失礼します。
お疲れ様でした。
うん。またね。
ハルヤごめんな。
オレも行く。
大丈夫。また明日!
みんなの都合がいいときにやろう。
おう。
……あ、でもオレ、あんま参加できねぇと思うんだよ。
バイトは今まで通り続けたいっつーか。
お前は知ってると思うけど、生活かかってんだわ。
うん、わかってる。
バイト頑張って。
サンキュ! じゃあな!
……。
ぜ、前途多難だ……。

 

 

投稿者 日生 良

物書き色々クリエイター