【エターナル夏休み部】第1章 5話「懺悔(?)の始まり」

メインストーリー1章5話

第1話 5話「懺悔(?)の始まり」

放課後・時計塔

ほら、時計塔を見て。
中に入るための扉のところ。
ええと……、鍵がかかっているように見えますね。
それも結構、厳重な……。
ごつい鍵何個もかかってる。
立ち入り禁止なんですから当然ですよ。
それが夜になったら開くんだ。
しかも深夜にね。
……何度調査しても、絶対に夜中しか開かない。
不良が夜中に忍び込んでるってことか?
うん、恐らくね。
恐らくっていうのは、100%の確証をまだ得ていないから。
けど、かなり当たってるとは思う。
大体、夜中から明け方までかな。
結構長く居座ってるみたい。
んで、盗難被害も大体その時刻。
夜に盗難……?
なんでまた。
夜に願い事をする生徒がいるってことだよ。
時計塔は静かな場所だけど、
昼間はそれなりに人がいる。
願い事をしていると思われたくない生徒や、
より願いが叶うように、禁止されている塔の内部に
侵入しようとする生徒も多いみたい。
時計塔のてっぺんにある鐘の音は、
幸せを運んでくるって言われてるから。
近づきたかったら、無理にでも中に入るしかないからね。
それほど行動力があるのなら自分で叶えろ、
と言いたくなりますね。
それを言ったら可哀想だよ。
てことは、夜に願い事をしてるやつらが
被害に遭ってるってことか?
そう。
それを生徒会が調べてたんですか?
うん。
うちの生徒会は結構……、なんていうか。
いい意味で、「普通」ではないから。
「普通」じゃなかったから、
ここまで調べられたわけなんだけどね。
ってことは、その不良共が二度と時計塔に
近寄らなくなるようにシメればいいわけだ。
乱暴で強引だが、手っ取り早くはある。
けどなぁ……。
反対です。
我々が不良とやりあったとなれば、
それこそ罰が大きくなるだけでは?
現段階で教師陣が
我々にどのような罰をどのくらい与えるのかが
明確ではありません。
万が一、退学処分にでもなったらどうするんです?
「懺悔部」に居続けたほうがマシってもんですよ。
うん。
やりあわなきゃいい。

どういうことです?
……。
さて、
ガラの悪い人たちがよく利用するお店でバイトしてる丈は
彼らの持ち物の中に何があるのか想像できるよね。
え?
……ライター?
そろそろ夏だね、丈。
……花火。
丈、バイト先の店長は何が趣味なんだっけ?
……科学実験。
最近その店長は実験と称して何をしたんだっけ。
花火の火薬バラして自家製爆弾作った。
どんなお店で働いてるんですか……!?
ドン引き。
いや、オレは何もしてねーよ!
協力もしてねーし。
客に売ってるわけでもねーし!
いいえ。
花火の火薬をバラすことも、
爆弾を作ることも法に触れてます。
つまりあなたは、犯罪者の片棒担いでます。
……。
短い青春でしたね。
くっ……!
おいハルヤ!
オレが責められるから早く結論を言ってくれ!
どうせその爆弾持って来いって話だろうけどな!
違う違う。
さすがにそんな危ないことしないよ。
その自家製爆弾の設計図を持ってきてほしいんだ。
……できれば、完全版じゃないやつ。
自家製爆弾を作ろうとしていることがわかりつつも、
配合諸々失敗してる、「失敗設計図」を。
あるよね?
知らねぇよ……。
まぁ、ゴミ箱漁ればあるとは思うけど……。
じゃあ決まり!
丈、絶対持ってきてね!
くそ。
お前そういうとこ物凄く頑固だよな!
前からわかってたけど!
わかってたけどなんかモヤモヤする!
……さすがというか。
生徒会を率いていただけありますね。
発想がすごいというか、なんというか……。
強引。
このくらい強引じゃないと
務まらないということなんでしょうかね。
生徒会に入らなくて正解でした。
……。

 

夜・時計塔

ちょっと。
俺に近づかないでくれます?
世間は広いようで狭いとは言いますが、
まさかこんな身近に犯罪者がいるとは……。
うるせぇ! オレは何もしてねぇっつの!
……おい、ハルヤ!
「失敗設計図」持ってきたぞ!
本当に持ってきてくれた! ありがとう!
お前が持って来いって言ったんだろが。
いやでも、良心の呵責で持ってこない可能性も
あるかなって思ってたから。
なくてすみませんねぇ。
マジでなかったわ。そんなん。
でも、この設計図でどうするんですか?
失敗作の設計図ですから、この通りに作っても
どうにもならないと思うんですけど……。
うん。おれたちは何もしないよ。
ただ、こうやって……。
おれが買ってきた大量の花火と一緒に設計図を置いておけば
「爆弾を作ろうとしてる容疑」はかかる、かもしれない。
はーん。なるほど。
濡れ衣を着せようって言うんですね?
そう。
おれが不良たちを見張ってるから、
みんなはその隙に爆弾と設計図を
時計塔の見つけづらい場所に隠してほしいんだ。
あとはおれが、先生に報告をする。
「懺悔部」としての任務を果たそうと
生徒の紛失物を探していたら、
時計塔内に不審なものを発見しました。
侵入していた不良たちは
時計塔で爆弾を作ろうとしていたのかもしれません、ってね。
うっかり陽谷くんは、
「時計塔の不良」と「爆弾設計図」を
バラバラの事案として考えずに、
紐づけて報告しちゃうんだよね。
高校生だから仕方がないよね。探偵じゃないし。
一緒に見つけたんだから一緒の事案だって思っちゃうよね。
うわぁ……。
「懺悔部」はお手柄。
未然に事故を防ぎました。表彰ものです。
廃部に一歩近づくだろうし、
もしかしたらこれ一発で廃部かも。
っていうのが、おれが考えたシナリオ。
即席で考えたところが多いから、穴だらけなんだけどね。
上手くいけばいいんですけどねぇ……。
ハァ。やってみるしかねーか。
オレはハルヤと一緒に、不良共を見張る側にまわるぜ。
ハルヤだけだと頼りねぇからな。
花火と設計図は、……えーと、お前らの誰か頼む。
嫌です。
えええ……。
協力しようよ。
僕は時計塔の内部には詳しくありませんので。
……じゃあいっすよ。
俺がやります。
このくらいは協力します。
ありがとう!
みんな、よろしくね!
おれたちはまだ知り合ったばかりだ。
きちんと連携をとることは難しい。
だから、何かあったら誰かがフォローしよう。
「懺悔部」は嫌なものだったかもしれないけど、
せめて、笑顔で終わろう。

 

 

投稿者 日生 良

物書き色々クリエイター